重視すべきは『素のチャート』- 矢口新の短期トレード教室(書評/レビュー)

矢口新の短期トレード教室(パンローリング社)
 著者は、『投機筋(仮需)』と『投資筋(実需)』、この2種類の異質が織りなす行動を軸に、マーケットの価格変動に対する一つの解答を導き出した。
マーケットのプロとして長年の実務をこなしてきた経験から、代表的なテクニカル指標の『使える』『使えない』を明確に記している。
おすすめ度
読みやすさ
内容充実度

マーケットを形作るチャートにおいて、広く認知され、支持されているテクニカル分析法に、トレンドラインが存在する。

  • 上昇トレンドライン
  • 下降トレンドライン
  • 三角持ち合い(収縮トライアングル)
  • 拡散相場(拡大トライアングル)

明瞭ではない拡散相場を除いて、上昇・下降トレンドラインとその双方からなる収縮トライアングルは、あらゆるマーケット・あらゆる時間軸において機能していることが確認できる。

しかし、
チャートとは本来、人間が値動きを視認しやすくするための、いわば都合により作られたものである。
そこに斜線を書き入れ、これほどまでに値動きと連動するという事実は、釈然としないと思っている方も多いのではないだろうか。

そんな、今では当たり前のように認知されているトレンドラインが、一体なぜ機能するのだろうか。

このマーケットの性質に、
著者は独自の理論からなる一つの解答を導き出した。

その解答が、

マーケット参加者を『投機筋(仮需)』と『投資筋(実需)』の2つに分類し、マーケットの価格変動の本質を捉えた『TPA理論(タペストリー・プライスアクション理論)』である。

 

このTPA理論を理解すれば、あらゆるマーケットで利益をあげられるようになる、とはいかないが、この理論を一つの知識として備えておくことで、マーケットを新たな視点から観察することが出来るようになるだろう。

 

また、
本書は一般的に使用されているテクニカル指標にも言及している。

それぞれのテクニカル指標の『仕組み』を解説したうえで、その指標が『使える』『使えない』を明確に評価している。

本書においては、一般的に人気とされているテクニカル指標が意外な評価を受けていることに驚くかもしれない。

 

そして、
それらのテクニカル指標を学び、理解し、実践した上で、著者は『素のチャート』でのトレードを最終目的地としている。

素のチャートとは、
チャート上に移動平均線、一目、ボリンジャー、RSI、ストキャスなどのテクニカル指標を一切表示させない状態である。
視認できるのは、価格変動を始値・終値・高値・安値で表記したロウソク足(もしくはバーチャート)のみである。

本書を読むだけで、すぐに素のチャートでトレード出来るようになるわけではなく、時間をかけた練習と実践が必要ではある。

しかし、
テクニカル指標に頼らない、値動きからトレードを見出すスタイルの一つのきっかけとなりえる書籍である。

本書は日本人が執筆しており、トレード本の翻訳書にありがちな難解な言い回しは存在せず、読みやすい。

そして、
翻訳書と比較して値段設定も手頃となっている。

今現在、
テクニカル指標を使ったトレードに疑問を感じているトレーダーは、この書籍を一読されてみてはいかがだろうか。

矢口新の短期トレード教室(パンローリング社)
 著者は、『投機筋(仮需)』と『投資筋(実需)』、この2種類の異質が織りなす行動を軸に、マーケットの価格変動に対する一つの解答を導き出した。
マーケットのプロとして長年の実務をこなしてきた経験から、代表的なテクニカル指標の『使える』『使えない』を明確に記している。
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